1.会社の給与水準が他社と比べて妥当かを確認する

  • 縦軸に給与、横軸に年齢として従業員の給与をプロットする。
  • 同じ業種の同じ従業員規模の会社の平均値を賃金センサスで探し、当社との賃金と比較する。
  • 平均値を2割以上上回る者の理由と貢献度を考え、維持すべきか考える。
  • 均値を3割以上大きく下回る者の理由と貢献度や離職した場合の是非を考え、水準を維持するべきか考える。

2.誰を処遇すべきかを正しく認識する

<処遇したい者の例>

  • 営業の稼ぎ頭
  • 営業につながる企画(商品、サービス)を考えることのできる者
  • 管理部門のスペシャリスト(経理、資産運用、IT)

3.活躍できていないのに高給与となっている者を正しく認識する。

<報酬とみあわない理由例>

  • 従来の給与制度で年齢給や勤続級の昇給カーブが高かった結果、給与が高いケース。
  • 資格級に上限が設定されていないため、同じ資格で給与の高いものと低い者の差が大きくなってしまったケース(この場合、当資格よりも上位の資格の者との給与の逆転も生じているケースもあります。)。
  • 職務給や職位手当がラインとスタッフで差がなく、残業代で簡単に非管理職が管理職の給与を上回ってしまうケース。
  • 家族手当が扶養の有無を考慮しているか、住宅手当の上限年齢が妥当かを検討する。

4.人事評価のメリハリを給与や賞与にどのように反映させるかを検討する。

  • 標準評価で同じ資格内で昇給できる上限給与額を決める。(新卒で入社した場合の年齢と能力水準からモデル昇給額を作成する。
  • 資格の数を検討する。
  • 残業代と所定内給与を決定する。

5.非管理職の給与の設計

  • 非管理職の最大給与を決定する。

 年間の残業代を想定して、初級管理職の年収をできるだけ上回らないように設定する。

  • 36協定と最大残業代

 36協定は月に45時間、年間360時間を上限にする。

  • 初任管理職と非管理職の給与逆転に対する考え方(どこまで容認するか)
  • 基本制度
  • 月例給与の構成

給与項目の方針

  • 誰を処遇すべきかの次に当社は何を優先して会社はお金をだすのか方針を考える。
  • 従業員に対するメッセージとなる。
  • 現在の能力の等級と職位の価値の等級の2軸で給与を分けて基本制度を作成する。
  • 給与への人事評価の反映のさせ方。
  • 人事評価による昇給減給を累積するか、洗い替えるか。

年功給、年齢給、勤続給

  • 年齢や勤続年数に応じて昇給する考え方。
  • 年齢に応じた社員の生計費に配慮する。

能力給、職能給

  • 従業員の能力の高まりに応じて昇給する考え方。
  • 能力の等級を設け、各等級の下限と上限を設けた範囲給の中で昇給する仕組みが普通。
  • 上限までいくと昇給がストップする。

職務給、役割給

  • 役職や役割の重さを等級付けして、各等級ごとの定額か範囲給で昇給する仕組み。

成果給

  • 成果に応じて支給する月齢給与。
  • 各資格のどのような成果に対していくら払うかは決めようがないので、各資格の基準額に対して評価に応じて基準額を加減(A評価は基準額の1.5倍、AB評価は基準額の1.2倍、BC評価は0.9倍)する設定が多い。
  • 要するに月例給与の一部を賞与のように変動費化する方策として導入されることが多い。
  • メリハリが大きいほど、人事評価への納得感が求められる。

生計手当(家族手当、住宅手当)

  • 仕事に対する報酬ではなく、従業員の生計費の変化を補助する。
  • 支給対象者の条件がなくなれば支給しなくなる設計も可能(家族手当のうち子供手当、支給は大学卒業までなど。住宅手当も最高年齢を40歳として、それまでに住宅取得を促す会社もある。)。

賞与に対する人事評価の反映のさせ方

  • 月例給与に比べてデメリット反映の制約を受けない。
  • 賞与支給基準(基本制度との関係)。
  • 欠勤控除、長期欠勤者への対応、支給基準。

6.管理職の給与の設計

管理職の最大給与を決定する。

  • 管理職の給与は業界で課長であれば年収〇万円程度、部長であれば〇万円程度といった相場があるので、これをターゲットにする。
  • 相場は、刊行物である「賃金センサス」や業界内でのヒアリングや情報交換で報酬情報を入手する。

基本制度

  • 資格制度+職務等級制度とする会社が多いです。
  • 管理職には、一定水準の年収を払っているため、人事評価によるメリハリは非管理職に比べると大きく設定できます。管理職は結果(成果)に対して評価するため、不合理な評価となりにくいです。(非管理職の場合、あまりに人事評価のメリハリが大きく、特にデメリット額が大きいと生活に支障をあたえてしまいます。また、人事評価に納得がいかない場合、デメリット評価による減額は、従業員のモチベーションを大きく下げてしまいます。)
  • 管理職でも全国転勤のある者と地域限定の転勤のある者とで、給与差をつける会社が多いです。これは人材の配置の柔軟性が高い者ほど会社にとって都合が良い反面、当人にとって転勤は経済的負担や家族への負担がかかるため、処遇面で配慮するものです。
  • 全国転勤職と地域限定職というコース別管理を行う場合と、転勤加算として、地域限定職の例えば2割増しにする仕組みとする場合があります。
  • 同じポストにも関わらず役職手当や基本給が違うのは、おかしいという考え方もあるが、会社の人材配置のプレミアムと割り切って考えてよいでしょう。

月例給与の構成

  • 基本制度と同じで資格給+職務給(または役割給)とする会社が多い。

賞与制度

  • 月例給与に乗数をかけて賞与の基本額とする会社と資格等級別に基準額を決めるテーブル方式の会社がある。
  • 人事評価を反映させると月例給与が増えると賞与の基準額も乗数された分増え、これにさらに人事評価を反映させると人事評価の二重反映となる。そこで、テーブル方式とする方が合理的である。

7.年俸制は自社に適しているか

年俸制とはどのような仕組みか

 年俸制は1年の報酬額を会社ととり決めて給与または賞与として支給する仕組みです。

 スポーツ選手のように前年の実績に応じて、大幅なアップ、ダウンする会社もあれば、評価に応じた昇給額、降給額を定めておいて、人事評価に応じて翌年度の給与賞与が決まる会社があります。後者の会社が多いようです。

年俸制と残業代

 「年俸制なのだから残業代なんか出るわけがない。」「年俸額の中に時間外労働・休日労働」の割増賃金分が含まれている。」という方がいます。しかし、そうした運用を行うためには、就業規則等に給与のうち何時間部分(何割部分)が、割増賃金に相当するのかなどを「通常の賃金」とは区別して明記しておくことが必要です。

 法令には年俸制に関する特別の規定はありません。あくまでも、残業の計算基礎となる給与額で時間単価が決まり、事前に定めた時間分の残業代を定額支給することが認められるだけで、その時間分を超過した場合は、その超過時間分の残業支給が必要になります。

 また、当然36協定の適用を免れませんので、法定外労働時間の上限の取り決めや割り増し賃金を支払う必要があります。