1. 従業員の上位2割に業界の年齢別平均給与よりも高い水準を支給する。
  2. 貢献度の高い者の昇給を厚く、そうでない者は昇給なしか場合によっては降給する仕組みを入れる。
  3. 同じ等級にとどまると一定水準で昇給が停止する。
  4. 人事評価制度との連動制を高める。

1.月例給与の設定

積み上げ給と洗い替え給

 積み上げ給とは、前年の給与をベースとして、そこに、人事評価に応じた昇給額を足していく仕組みの給与制度です。一方、洗い替え給とは、職務や資格に応じて基準額を設けて、人事評価に応じて設定してある加算額と減算額を毎年反映して、1年ごとに洗い替える仕組みの給与制度です。

 積み上げ給は、その等級の上限額に達していない限り、給与があがっていく仕組みですので、高い人事評価でも大幅な昇給は設定しにくい仕組みです。理由は会社の人件費の毎年の増加につながるからです。洗い替え給は標準評価の場合は、基準額とすれば、高い評価者は割合としては高くないため、高い評価者の給与は大幅なメリット額を設定できますので、インセンティブが効く制度といえます。ただ、従業員にとっては、例えばA評価の給与が60万円、B評価の基準額の給与が50万円として、前年B評価だった者がA評価をとると10万円給与が大幅に上がるのでその年はうれしいのですが、翌年B評価の場合は、もとに50万円に下がってしまうため、モチベーションが下がってしまう懸念があります。A評価を維持して初めて給与も前年と同額なので、洗い替え給与が良いと考える従業員は少ないかもしれません。会社にとっては、人件費総額があまり変わらないため、メリットを感じる経営者もいます。

 人事評価制度に完全な仕組みはありませんので、1年で給与差が大きくつく仕組みは、本当の実力や会社への貢献度を反映しにくいのではないかと考えています。また、人事評価で給与に大きなメリハリがつくことを嫌う評価者の心理からますます標準評価によって、人材の優劣が付きにくいというデメリットもあります。同一等級は緩やかな差がつき、人事評価の累積で昇進や昇格等で実力にみあった処遇をしていくのが良いと思います。

2.賞与の設定

 賞与は給与とは異なり、会社への貢献度を大胆に配分してよい報酬です。給与は日常生活の基盤となる収入ですのであまり変動が大きいと生活設計に支障をきたします。一方、賞与は、受託ローンの支払いなどもありますが、過去の業績に対する見返りとしての位置づけです。労働基準法上も給与とは明確にわけられ、会社の業績が悪ければ、またあ、本人の貢献度があまりに低かったら支給なしも認められます。

 しかし、実際には前述の受託ローン返済のように生活給的な部分も期待されるため、年間で最低2カ月分は支払うように設計している会社が多いようです。

 賞与は業績反映部分ですので、非管理職については資格に応じて基準額に差を設け、管理職は上乗せとして職務に応じた基準額へ人事評価反映を行っている会社が多いです。

 給与比例で賞与額の基準額を作ると昇給が賞与に反映されたり、人事評価が2重に反映されることになったりしますので、テーブルごとに定額を設定するのが良いと思います。

3.退職金の設定

 退職金制度は、正社員に用意している会社が大半ですので、金額の多寡はあっても、用意しておいた方が、従業員の求人力、人材定着の観点から有効です。特に、パートタイマーに退職金制度を設けていない会社が多いので、少額でも退職金制度があった方が、かえって良い印象を与えることができると考えます。

 退職金は給与の後払いの性格を持ちますが、退職金制度を設けず、前払いですべて報酬で支払う会社もあります。しかし、国も退職金の準備について企業や個人への支援をはかっていますので、利用した方が従業員にはメリットがあると考えます。

 例えば税制上、勤続勤続20年までは年40万円、21年目からは年70万円ずつ退職所得控除が積みあがり、勤続10年であれば退職所得控除額は800万円、勤続30年であれば1,500万円を控除できます。

 さて、給与や賞与だけでなく、退職金制度へ人事評価を反映させる会社もあります。

 退職金制度は資格や職務、勤続年数等で1年間に積み上げるポイントを設定し、これを累積していくポイント制退職金制度が一般的です。人事評価は1年間の標準ポイントに評価上率をかける設定を行います。