在宅勤務における人事評価の課題

 在宅勤務/テレワークが増加したことで人事評価をすることが難しくなってきています。在宅勤務/テレワーク時代の人事評価の課題について考えてみましょう。

 「部下の勤務態度や仕事ぶりがわからない」「部下の他のチームメンバーとのコミュニケーション状況がわからない」「部下のモチベーションや感情面が把握できない」「部下と仕事外の雑談や今の仕事とは直接関係ない将来的なアイデアなどを話す機会が減った」

 これらは、在宅勤務/テレワークが原因で人事評価の問題点となる可能性が高いものでしょう。当然、同じ場所で同じ時間を共有する時間が長ければ、各メンバーの働いている姿を観察したり、周囲とコミュニケーションをとる状況や顔色から察したりする情報も多くなると考えられます。

  • 在宅勤務/テレワークによるオンラインミーティングは、どうしても主目的のみの会話で完結するため、相手の深いところまで理解が及びにくい。
  • 在宅勤務/テレワークによるコミュニケーションは、どうしても決められたメンバーとの会話となる

といったように、これまでより部下の内面について、部分的な情報による理解が多くなることは想定されます。一方で、勤務態度や部下のモチベーション・メンタルは、どこまで人事評価に反映するべきなのでしょうか。

 人事評価の項目の中で、「在宅勤務/テレワークでは十分に察知しえない要素を含んだ項目」や「在宅/テレワークの定着以前から在籍していた従業員とそれ以後配属の従業員でどうしても差異が発生する恐れがある項目」がないか検討してみましょう。そういった項目があった場合は評価項目から外す、もしくはウェイトを下げるなどの変更をしてみてはいかがでしょうか。

 日本で長く活用されてきた職能資格制度は、能力評価・行動評価では、現実的には、思考の特徴、会話、長所や短所など、勤務中だけでなく、雑談中や場合によっては懇親会など業務外を含めて観察し、成果だけではなく、言葉以外の情報や業務以外のスキルや能力も含めて評価します。(結果、上司部下の相性やチーム内の立ち位置、目立ち方などの印象によって人事評価にも影響が出ることもある)

ですが、在宅勤務/テレワークが前提となると、人事評価に必要な情報が断片的となってしまいます。

 在宅勤務/テレワークによる最大の変化とは、周りに人がいないことが原因で主体的・自発的なコミュニケーションが必要となる、という点にあると考えられます。では、主体的・自発的なコミュニケーションを取ることができないと、どういったリスクがあるのでしょうか。

<従業員のパフォーマンス・モチベーション低下のリスク>
  • 目的に対する成果のプロセスやアウトプットが誰にも見えない(見えにくい)
  • 困っていても周囲が助けにくい
  • 自己の成長や周囲とのギャップに気づくことが少ない
  • 管理職は自身の指示を徹底できず、メンバーが混乱してしまう

 上記のような問題点が発生する可能性があり、個人も組織もパフォーマンスを発揮することができなくなってしまいます。また、一般的には在宅勤務/テレワークの定着以前よりも、従業員が孤立するリスクがあるため、パフォーマンスの低下やモチベーション低下につながることが想定されます。これを防ぐためには、対応を現場や管理職だけに任せず、会社としてあるいは人事部門としての検討が必要かと思いますが、そのために人事評価制度や運用の見直しで実現できることはないでしょうか。

<ウイズコロナでより上司に求められるのは対話力>
(ゴールのイメージ、スケジュール感、報告先、途中のフィードバック)
  • メールで言いっぱなしにしない
  • メールでは自分の考えていることは何パーセント伝わるか

 メールで詳しく要望を記載しても伝わるのは50%と思ってください。

 なぜなら、相手からの質問があって、それに回答することでお互いの理解の調整が図られるのであって、一方的なメールはどうしても本人の思い込みを除外できないからです。しかも、長文メールはお互いに避けようとするため、どうしても意識のズレが入り込んでしまいます。

1.メールの前に電話での会話でアウトラインの共有

 仕事の背景を共有してゴールを共有するには電話が短時間で済み、効果的です。

2.詳細な指示はメールで明確に

 概念や考え方、情熱や気持ちを共有するには会話が有効ですが、詳細を詰めて行ったり、文章の構成や表現は、具体的にディテールをメールで伝えるのが間違いなく、してほしいことが伝わるので有効です。

※部下が相談しやすいかは上司評価の大きなポイントです。