家族手当、住宅手当などは残業計算に含めなくても良い?
残業手当の計算の基準となる基礎賃金は法令上以下の定めがありますので、これらを除外して計算してかまいません。
【労働基準法】第37条第5項
第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
【労働基準法施行規則】第21条
法第37条第5項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第1項及び第3項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(いわゆる賞与)
ただし、これらの手当は名称に関係なく、実態で判断されます。
例えば、家族手当としての名称での支給ならば全て認められるわけではなく、また住宅手当として支給していれば全ての金額が認められるわけではありません。
残業計算の基礎から除外できる家族手当とは「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」として支給していることが必要です。扶養家族有りの労働者に支払われるものであっても、家族数に関係なく一律に支払われる手当は、除外できません。(S22年11月労働基準局長名通達)
例えば、配偶者2万円 子供1万円 2人目からは5千円 などは残業基礎から除外できますが、「家族手当」として結婚している社員に一律2万円などの場合は不可となります。また、均衡上独身者にも一定額の手当が支払われている場合には、独身者に支払われている部分、又は扶養家族のある者に対して「本人分」として支払われている部分は、家族手当ではなくその他の一律の手当とみなされます(S22年12月に労働基準局長名通達))。
同様に残業代の基礎に入れない住宅手当の要件としては住宅に要する費用に対して、定率を乗じた額や費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って額を多くするとなることが必要です。例えば、一律に支払われる住宅手当:社員全員に2万円 や、賃貸住宅は2万円、持ち家居住者は1万円という定額支給であれば、残業の基礎に入れるべき単なる一律支給の手当とみなされます。
一定額で支払っていると除外できません。住宅に要する費用に応じて、支給額を変動させる必要があります。
残業の対象外とするには、家賃5万~10万:手当3万円支給、家賃10万~15万家賃5万円支給、持ち家の場合はローンの額の20%を支給などにする必要があるわけです。
もちろん上記の支給方法に関しては就業規則や賃金規程などで明文化しておくことも必要となります。最近の裁判例では同一労働同一賃金ということで正社員だから〇〇手当が有り、契約社員だから〇〇手当は支給しない、などの単に「正社員だから」「契約社員・パートだから」などの支給方法は否定され、それなりの理屈と均衡待遇が求められるようになりましたので、給与項目の設定次第で人件費の効率はかわってきます。