年俸制のメリットとは

 近年、求人情報の給与欄でもたまに見かける「年俸制」。 この制度の給与形態、またボーナスや残業代などの仕組みは一体どのようなものなのでしょうか。

 年俸制とは、社員の給与の金額を1年単位で決定し、その金額を分割して支払う給与形態のことです。この「1年単位の給与」のことを「年俸」と言い、社員と会社は、1年の給与総額を合意し、1年ごとに更改、合意の上で給与額が決定されます。年俸額の決定方法は著しく不合理でなければ、法律上特段の制限はありません。年棒額の決め方は会社によってさまざまですが、大企業では賃金規定に定められたルールや計算式に基づいて決定され、中小企業では経営者から社員に年俸額を提案し、社員がそれを受け入れることで決まる、といったケースが比較的多く見られます。

 年俸制で気を付けなければいけないのは、「支払い方」。年俸なので年に1回まとめて支払えば良いということではなく、分割して毎月1回以上支払われなければなりません。一般的には月給制の社員の給与支払い日に合わせて、賞与を4カ月分カウントして年俸の16分の1が支払われたり、賞与を6カ月分として年俸の18分の1を支払われたりします。給与を年単位で決めること以外は、年俸制と月給制の社員を比較して大きく変わるところはなく、特殊なものではないといえるでしょう。もちろん、年俸制だから労働時間管理をしなくて良いとか、年俸制だから残業代を支払わなくても良いということはありません。

年俸制のメリット・デメリット

 次に、社員側から見た年俸制のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

 年俸制は少なくとも、向こう1年間は意に反して給与を減らされないことがメリットといえます。最初に1年分の総額を合意して、それを12等分して支払っているので、会社が年の途中で給与を減らすのは契約違反になります。

 一方、月給制の場合は月単位で給与が決まるので、法律上の制限はありますが、会社の業績不振や本人の成績不振の場合、会社は随時、給与の減額を行うことができる余地があります。

デメリット

 更新時に年俸額が大きく変動するリスクがあるということです。もちろん増える分には問題ありませんが、大幅に減額となる場合も。年俸制が必ずしも成果主義と結びつくわけではなく、理屈上は年功序列式の年俸制というケースもありえます。

 ただし、今のところ成果主義の人事制度とセットで年俸制は導入されている場合が大半のようです。月給制で成果主義の会社も存在しますが、年俸制とセットで導入される成果主義は、月給制の場合以上に信賞必罰の性質が高いものになる傾向があります。そのため、成果を出すことができなかった場合、翌年の年俸額は今年の半分やそれ以下になってしまう可能性もあるのです。現在の年俸額が続く保証はないので、生活水準をどのくらいまで上げても大丈夫なのかとか、住宅ローンはいくらまで組めるのかとか、判断が難しくなってしまうところが、生活面においてのデメリットになってくるかもしれません。